
【コラム#02】「Neat, or Cymbal!」デザイン周りの話
楽曲解説やアルバム制作の頃の時代背景の話をしていますが、さらにパッケージ・デザインやMVなどの話もしなければならないということに気がつきました。なので今回は僕のリーダー作品のパッケージデザインの話をしていきます。
【コラム#02】「Neat, or Cymbal!」デザイン周りの話
シンバルズの最初の作品「I'm a Believer」(カセット・シングル)および「Neat, or Cymbal!」(ミニ・アルバム)のパッケージ・デザインをしてくださったのは、当時LD&Kのデザイナーだった高橋晃さん。ご存知の通り、yes, mama ok?メンバーで音楽以外(時々サックス)の色々を担当をされている方です。この作品を作った直後に高橋さんは独立されたので、その後で新任のデザイナーさんがLD&Kに入社してきました。それがセカンド・ミニアルバム「MIssile & Chocolate」以降、今に至るまでずっとデザイン面でのパートナーになってくれている菊池元淑さんです。マスタリングが終わったら菊池さんと一緒にパッケージ・デザインで徹夜するのはもう儀式みたいなものでした。実に濃密な日々。音楽以外にもさまざまなアートに精通している彼がいなければ今の僕はありません。また、何しろ長い付き合いなのでデザイン作業はもう本当にツーとカーで、こんなに頼もしいことはありません。パッケージだけでなく、シンバルズ後期のエンブレム、FROGのロゴ、TWEEDEESのエンブレム、そしてこのサイトTWDS CLUBのロゴ、そして僕個人のロゴ(沖井の家紋+ラテン語のモットー)のデザインも彼の手によるものです。もう僕の人生のビジュアルをデザインしてもらっていると言っても過言ではないかもしれません。菊池くん、これからもよろしくね。
さて、話は初めてのジャケットデザインの日に戻ります。ジャケットのデザインを⚪︎月×日にするよ、という話を聞いた僕はLD&Kの事務所にお邪魔し、高橋さんの隣に座って一緒にああでもないこうでもないをさせていただきました。とても刺激的で楽しい作業だったのですが、後日LD&K大谷社長に「沖井くん珍しいねえ。普通アーティストはみんなデザインが仕上がった後で『こんな感じになったんですね!』みたいな感じなのに。」と言われて大変驚きました。自分の作品のジャケットなのに、みんなノータッチなの?と。まあ素人が横からごちゃごちゃと口を出すのはデザイナーさんからしたらうるさいかもしれん。しかし、この最初のデザイン作業があまりにも楽しかったので、今に至るまで僕のデザインのスタンスは変わりません。シンバルズのアルバム「sine」(2002年)の時のように、まだ一曲も出来てない段階でジャケットのラフを描いて、会議でレコード会社の皆さんやメンバーみんなに見せたりした事もあります。作品のイメージを視覚化するという意味で、僕にはとても大切な欠かせない作業になっています。
イメージという話では「イメージカラー」というものをアイテム毎に決めています。これは大抵、アルバム制作に入る前に決めていますね。シンバルズで言うと、盤面に一本、イメージカラーのストライプが入っています。これがあると楽曲制作もやりやすくなるものです。業界内で配布するためのサンプル・キットもこの色で印刷されていました。
この「イメージ・カラーを決めてアルバムを作る」というやり方は今でも続いています。TWEEDEESで言えば、「The Sound Sounds.」はレモンイエロー、「Delicious.」はイングリッシュ・グリーン、など。次回作のカラーはまだ決まっていませんが、次の次のアルバムは濃い紫と決めています。
今でも続いているといえば、裏ジャケットのデザインのフォーマットもそうですね。元々「Neat, or Cymbal!」のデザインを高橋さんとしている際に「裏ジャケどうしよっか」と言われて提案させて頂いたたものです。裏ジャケなので映画のエンドロールみたいにしたいと思い、なぜか即座に思いついたのがYMOの映画「PROPAGANDA」でした。スタッフクレジットが昇って行く中、三人のメンバーの写真が並んで昇って行ったのを中学生の僕はとても格好いいと思ったものです。それを説明した時に高橋さんが理解してくれたかどうかは記憶が定かではありませんが、一応イメージ通りになったので満足したのを覚えています。このフォーマットを菊池さんと微調整しながら、シンバルズ〜FROG〜TWEEDEESと続けています。四半世紀以上も同じテンプレの裏ジャケットをひたすら続けているのは世界広しといえど僕くらいなものではないでしょうか。統一されたフォーマットでデザインされたものはコレクションしていて楽しい。そう教えてくれたのは、子供の頃に散々作ったタミヤのプラモデルだったと思います。人生、いったい何が役に立つかわからないものですが、好きなものは思いっきり好きになった方が良い、とだけは言えそうな気がします。
「Neat, or Cymbal!」ジャケットの少女はフランス人のカミィ・ローニーちゃん。高橋さんのお知り合いの娘さんだそうです。’98年当時3歳だった彼女も今は素敵なレディになられていることでしょう。彼女はセカンド・ミニアルバム「MIssile & Chocolate」のジャケットにも登場し、初期シンバルズのイメージガールとして重要な役割を果たしています。その後2000年のシングル「Highway Star, Speed Star」のジャケットやMVにも登場してくれた際は、彼女の成長とシンバルズの成長を重ね合わせて見たような気がして嬉しかったものです(ちなみにMVの撮影の合間に彼女とバランスボールで散々遊んだ僕は翌日腰を痛めて立てなくなりました。皆さんもバランスボールには気をつけてくださいね)。アルバム「sine」(2002年)では英語のスクリプトの朗読も担当してくれています。カミィちゃんの肉声にご興味のある方は、ぜひアルバム「sine」もどうぞ。
キリがないですね。また何か思い出したら加筆したいと思います。「あれはなんだったのか」「これは沖井の記憶違いではないか」「そもそも面白くない」「もっと面白い話はないのか」などございましたら、どうぞお気軽にコメント欄にどうぞ。
沖井