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【沖井の冬楽曲解説 その10】TWEEDEES「作戦前夜」
沖井が過去に作ってきた「冬楽曲」について一曲ずつよもやま話をしていきます。今回はTWEEDEESの3rdアルバム『Delicious.』から「作戦前夜」のお話を。
https://youtu.be/NzlkKcnJLPw?si=hbe9kOn5FvcYKFfp
前作『à la mode』が夏のリリースだった為、TWEEDEES次回作はどうしても冬にリリースしたく思い、日本コロムビアさんとリリースタイミングの調整をして作った記憶があります。調整なのか?「どうか!冬で!冬に!出させてください!ふ・ゆ・に!」みたいな感じだったかもしれません笑。バンド名の「TWEED」もスコットランドの羊毛織物の生地「ハリス・ツイード」に由来があるし、そもそも僕は夏の曲を作るのが苦手だし。「次回作はどうしても最高傑作アルバムにしたい!なので、だから、冬のレコードを、冬にリリースしたい!」というわけでした。
かくして出来上がったアルバム『Delicious.』は、今までの僕のキャリアの中で最も満足度の高い作品となりました。2018年10月31日リリース。1年後にはコロナのせいで世界が一変してしまうことを思うと、「それ以前の世界」を記録できたと言う意味でも幸運なレコードということが出来る気がします。
そんなアルバムなので、ラスト・ナンバーはとびっきりあったかいクリスマス・ソングにすることは最初から決めていました。ええ。決めるのは簡単です。しかしそれが出来るかどうかは別の話。このために随分とメロディを書き散らかしました。仕事部屋はボツのメロディの断片で足の踏み場もない。当時のHDにはそれっぽいスケッチのファイルがいっっぱいあります。そのなかで、やっと「これなら…いけるか….?」となったのがこの「作戦前夜」の雛形です。これは以前にもご紹介しましたね。
https://tweedees.bitfan.id/contents/130393
最初はリズムもシャッフルではなかったんだなあ。このスケッチをあれやこれややって、やっと完成形になったわけです。どうです、大変そうでしょう笑。でもこのスケッチの段階で既にこの曲の風景は出来上がっていますね。今これを聴いても「これならいける!」と思えます。
アレンジも極力暖かいものにしたかったので、前作『à la mode』の「悪い大人のワルツ」にてすばらしい編曲をしてくれた辻林美穂さんに管弦の編曲をお願いしました。さすがですね。この曲では一部僕の作ったフレーズも残っているので、共編曲という事になります。辻林さんは同じ『Delicious.』の「間違いだらけの神様」でも木管主体の見事な編曲を発揮してくれました。大好き。大ファンです。ドラムはゲンちゃん。パートによって演奏スタイルが変わるので少々特殊な録音の手順になりましたが、さすがゲンちゃん、難なくこなして素晴らしいドラムを形にしてくれました。僕の譜面のめんどくさいヴォイシングをきちんと弾いてくれたピアノの井上くんもグッジョブです。そして何より、この曲の清浦さんの歌は最高ですね。彼女のキャリアの中でも屈指の歌唱だと思います。歌詞も素晴らしい。
この曲はアナログだとB面5曲目になりますが、B面は1曲目からずっと緊張感が高いので、この曲のイントロが流れてきた時の安堵感に毎回驚きます。僕はこの作品でこの瞬間が一番好きです。あ、あとエンディングの最後の鈴の音の止まった後の余韻も。この余韻はアナログレコードの方がより深く味わえるので、可能ならば皆さんアナログでこのアルバムを楽しんでいただければ嬉しいなと思います。
もうすぐ日付が変わってクリスマスが来ます。この曲を作った時よりも世界は混乱していますが、せめて今夜は。
世界中の子供達と、かつて子供だった全ての人たちへ。皆さんが素敵なクリスマスを迎えられるようにお祈りしたく思います。
沖井
