
【沖井の冬楽曲解説 その7】TWEEDEES「Boop Boop Bee Doop!」
沖井が過去に作ってきた「冬楽曲」について一曲ずつよもやま話をしていきます。今回はTWEEDEESの1stアルバム『Sound Sounds.』および1stアナログ7インチ シングル『Winter’s Day』より「Boop Boop Bee Doop!」のお話を。
https://youtu.be/Oxy8Kz1m2w8?si=J36rNLqMog6n4tGU
作曲は2014年の年末。TWEEDEESの1stアルバム『Sound Sounds.』の制作もいよいよ大詰めという頃に閃いた楽曲です。ちょうど10年前ですね。制作初期のファイル名には「ホール&オーツ」とありますが、今となってはこの曲のどこにH&O要素があるのか僕にも分かりません笑。ただ、アルバム制作を進めるうちに「TWEEDEESには16ビートのR&B的な要素も合いそうだ」という気づきがあり、おそらくそれを楽曲に昇華する上で、ポップスにブルー・アイド・ソウルを持ち込むことに高い完成度があるH&Oを参照したりしたんでしょう、当時の僕は。バンドという一つの人格のようなものに教えられながら、メンバーも成長していくのです。
TWEEDEESとしては初のキック4つ打ち曲。4つ打ちキックの上にシンコペーションの強いピアノとギターのコードで「煉瓦で殴りつけるように」責め立てるという手法。シンバルズやFROGでは確立していなかった自称「煉瓦サウンド」はこの曲で初めて編み出しました。そういう意味では記念碑的な楽曲ともいえます。この後もTWEEDEESで僕はこの手法を「BABY, BABY」「速度と力」「プリン賛歌」「à la mode」「未来のゆくえ」「花束と磁力」「GIRLS MIGHTY」などなどで拡張していくことになります。おそらく元々は初期キンクスの名曲の数々、いわゆる「キンキー・サウンド」がヒントになっているのだと思いますが。
歌詞の面でも「無意味かつ無根拠に強気な少女の無敵感をコミカルに描く」という後々にもTWEEDEESが好んだテーマを最初に取り入れた楽曲です。「あなたの/そのくだらない笑顔を見て/派手なあくびを」「アイスクリーム舐めながら/カシミアのコート/バックシートで/ご機嫌ななめ」とか「あなただけの真上に/隕石が落ちればいいのに/さあ今すぐに」当たりは作詞者として自分でもお気に入りのフレーズです。こういう情景は映画や漫画にしてみても胸糞悪いだけだろうけれど、歌にすると痛快に聴こえるのがポップ・ミュージックの不思議なところの一つだと思います。
この曲で弾いたベースは米Musicman社2004年製StingRay5。僕の所有するベースで最もタイトな音色の楽器です。サビの騒々しいフィル・インとその他のタイトな4つ打ちパートやAメロキメなどの対比を表現するにはこの楽器がぴったりです。
また、この曲には僕の楽曲にしては珍しく(唯一かも?)、ギターソロが2回もあります。1回目の少しジャズっぽいソロはEpiphone Shratonで、2回目の騒々しいソロはMoonのストラトで弾きました。特に1回目の方のソロは今まで自分が(たまに)弾いてきたギターソロの中でも一番のお気に入りです。山之内俊夫くんにも誉められたんだぜ。いえーい。誉められたら伸びるタイプです。このソロを録音しながら2015年の新年を迎えた記憶があります。ドラムはゲンちゃん。僕が制作したデモを聴いて、サビの冒頭の大袈裟なフィルインに戸惑っていましたが、すぐに楽しんで叩いてくれて嬉しく思いました。清浦さんの歌も素敵。そして冒頭の男性の声はラウンドテーブル北川勝利くん。録音後に二人で呑みに行った記憶があります。寒かったな、あの夜はマジで。
インストアなどの小編成ライヴも含め、おそらくTWEEDEESの全てのステージで演奏してきた唯一の楽曲と思います。そういう意味ではシンバルズにとっての「My Patrick」と似た立ち位置の楽曲かも知れません。代表曲と言うにはちょっと違うけれど、バンドの脊髄みたいな楽曲。作曲者がある程度そのバンドのことを理解・把握しないと作れないタイプの曲です。「初めまして」ではなく、何回か面識があるからこそ仕立てることのできるドレスのような。こう言うことがあるから、バンドというのは面白いんですね。
沖井
