
【沖井の冬楽曲解説 その4】NHK Eテレ『大!天才テレビくん』より「街は冬に踊る」
【沖井の冬楽曲解説 その4】NHK Eテレ『大!天才テレビくん』より「街は冬に踊る」
沖井が過去に作ってきた「冬楽曲」について一曲ずつよもやま話をしていきます。今回はNHK Eテレ『大!天才テレビくん』から「街は冬に踊る」のお話を。
https://youtu.be/INgsv3H8FJQ?si=U5Bi1Hi0Pob7hOmL
2012年度のNHK Eテレ『大!天才テレビくん 』に僕は二曲ほど提供させていただきました。「思春期前期男子の葛藤の歌」と「クリスマス・ナンバー」というテーマでしたが、それぞれ「世界のからくりと僕のゆびさき」「街は冬に踊る」という形で出来上がりました。どちらも大好物のテーマなので大喜びで制作させてもらったものですが、特にこの「街は冬に踊る」に関しては「子供たち三人が歌ってくれる」ということで気合いが入ったものです。
歌ってくれたのは鎮西寿々歌さん、長谷川ニーナさん、ソーズビー航洋さん。三人ともそれぞれに魅力的な歌手でした。鎮西さんの華やかさ、長谷川さんのパワフルさ、そして声変わり前のソーズビーさんの甘酸っぱさ。なんという贅沢な組み合わせ!三人の特性を考えつつパート分けをしてゆくのは繊細だけど楽しい作業でした。そして三人がハモった時の効果たるや。これは大人には出せない華やかさですね。うきうきしながら録音のディレクションをしたNHKのスタジオを思い出します。
間奏には譜面を作って持ち込ませていただいたトロンボーンのソリを。トロンボーンやフレンチホルンの中低域の豊かさが大好きです。秋や冬の澄み切った高い空に吹き抜ける風を思い起こさせます。
ドラムを叩いてくれたのはゲンちゃん。デモを聴いて一発で曲を理解してくれたらしく、まあ楽勝という感じであっという間に録り終えてくれました。今はもう無い新宿のバズーカスタジオでドラム録り。後期シンバルズの頃には自宅の次に長い時間を過ごした空間でしたね。懐かしい。
この曲の録音に使ったベースは米国B.C.Rich社’78年製のEagleBassです。最近はパッシヴ設定で弾くことが多いこのベースですが、音色から察するにこの曲ではアクティヴ設定で弾いたようですね。端正で実に良い音です。EagleBass特有の長いサステインが実に心地よい。イントロやサビ前のブリッジで聞こえるファズベースはオーヴァーダビングしたものです。
歌詞をきちんと聴き直すと、あちこちに散りばめられた冬のディテールの中、この曲の主人公も一人ですね。僕がクリスマスの歌詞を書くと、大抵の主人公は一人っきりです。一人だからこそ感じることのできるクリスマスの何かのことが、きっと僕は好きなのでしょう。
沖井
